よろこんで!**してみました。

アラフィフ男子が、何気ない日常生活で楽しいと思うことを、つれづれに書く雑記ブログ。美術・落語・スポーツ観戦・グルメ・お酒に旅行等々。たまには、なにか語ることもあるかも・・・

美術展:「狩野芳崖と四天王 近代日本画、もうひとつの水脈」展@泉屋博古館(六本木)に行ってきました。

こんばんは。この前の日曜日(10/14)の午前中は、とあるセミナー(資産運用。オジさんも将来に不安が多くて・・・)を聞いて、その後、午後は美術展をまわりました。セミナーもおもしろかったし、昼はラーメンを食べたし、美術展もまわって、なかなか充実した日曜日でした。なかなか筆が遅くて、記事はまとまりません^^;(大したこと書いてないんですが)

ということで、もう多くの人が行かれていますが、この美術展を報告です。

 

[目次] 

 

I.展覧会概要

(1)展覧会名称

狩野芳崖と四天王 近代日本画、もうひとつの水脈」展

www.sen-oku.or.jp

狩野芳崖(かのう ほうがい)は、1828(文政11)~1888(明治21)、幕末から明治時代を生きた絵師で、最後の狩野派であり、「近代日本画の父」であります。長府藩(山口県下関市)出身、父も長府藩御用絵師で19歳で木挽町狩野家(東銀座あたり?)で修行。この時、修行をともにした盟友に本展でも作品が展示されている橋本雅邦がいます。54歳の頃、フェノロサと出会い日本画に西洋画の空間表現や色彩を摂取した日本画革新運動を進めます。 今回、展示されている「不動明王」(1887年(明治20))、「悲母観音」(1888年(明治21))はともに重要文化財で、代表作の一つでもあります。

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さらに、これまで、狩野芳崖の弟子はあまりスポットライトが当たっていませんでしたが、今回の展覧会は、この弟子達にスポットライトを当てます。「芳崖四天王」と呼ばれた岡倉秋水(おかくらしゅうすい、1867-1950、岡倉天心の甥)、高屋肖哲(たかやしょうてつ、1866-1945)、本田天城(1867-1946、ほんだてんじょう)、岡不崩(おかふほう、1869-1940)の4人です。それぞれについては、また、後ほど・・・

※ 本記事は、パンフや美術展の説明書き等を参考に記述しています。

 

(2) 場所

泉屋博古館

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www.sen-oku.or.jp

※ 「せんおくはくこかん」と読みます。「泉屋」は住友家の屋号で、リンクを見てのとおり、住友家のコレクションを保存、展示する美術館です。京都に本館があり、2002年に東京の分館が設立されました。コレクションは多種多様ですが、中国青銅器や陶磁器などの名品を多く所蔵しています。(私は、絵の展覧会メインで見に来ていますが)

なお、私は普段は銀座線の溜池山王駅南北線六本木一丁目駅から歩いて行っています。

 

(3) 会期

2018/9/15(土)~10/28(日)

 

※ 月曜日休館。今は展示替えされ、後期展示期間です(10/10から後期)

週末も後2回!(2018/10/18時点)

 

(4) 開館時間

10:00〜17:00(入館は16:30まで)

※ 金曜日ナイトミュージアムなし。(残念)

 

(5) 訪問時間

10/14(日) 15:50頃 鑑賞時間は60分程度です。展示室は2部屋なので、十分、見られると思います。


(6) 料金

大人800円、大高生600円、中学生以下無料 ※ カード利用不可


(7) 混雑状況

人はいますが、十分、ゆっくり見られます。


(8) 写真撮影

NGです。 


(9) ミュージアムショップ

受付に絵ハガキ、図録などを販売しています。(ショップではないけど、特別展のグッズはあります)

なお、私が訪問したときは図録は品切れでした。2,700円だとか。10/16(火)再入荷とお知らせがあったので、今は購入可能だと思います。それだけ、この展覧会が人気ということですね。(ブログでも結構紹介されていますよね)

私は長い絵ハガキは1枚購入。150円だったと思います。(すみません。失念)

こちらも、クレジットカードNGです。

 

(10) 美術館メモ

このブログでは初めて書く美術館なので、最初にいろいろと書きましたが、私がここに来るのは今年は2回目です。春に木島櫻谷(このしまおうこく)展があり、こちらを見ました。京都画家で動物画を得意としていましたが、こちらの展覧会も良かったです。前にコレクション展を見に来たこともありますが、コレクションの展示に限らず、おもしろい展覧会を企画・開催する美術館だと思います。


(11) 行くきっかけ

こちらも、チラシミュージアムなどなど、いろいろなメディアでも取り上げられていますし、結構、注目を集めている美術展だと思いますが、私が行こうと思った決定的な動機は芳崖最後の作「悲母観音」(1888年(明治21) 東京藝術大学所蔵)を見たかったからです。この絵が後期展示だったので、後期になるのを待って見に行きました。

この絵との出会いは2015年春に東京藝術大学美術館で開催された「ダブル・インパクト - 明治ニッポンの美」でした。この時、神秘的で不思議な世界と絵の持つ神々しさに魅了されたのを覚えています。(もっと正直に言えば、芳崖の絵でよくみているのはこの絵くらいですね)

なので、この絵を、見ることを目的の一つに、展覧会に行きました。

 

II. 展覧会所感

(1) 個人的な所感

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(これは「仁王捉鬼図」(1886(明治19))です)


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狩野芳崖とその弟子たちですが、それ以外にも橋本雅邦、木村立獄、狩野友信から菱田春草等の同時代の画家の作品が展示されています。

狩野芳崖の弟子達もそれぞれに特徴があり、

・岡倉秋水:福井県福井市出身。不動明王山水画等、幅広い作品があります。

・高屋肖哲:岐阜県大垣市出身。芳崖の悲母観音の模写から、それをモチーフにしたいろいろな観音像図等、仏画に特徴があります。

・本多天城:江戸深川出身。展覧会では山水画中心に展示されています。

・岡不崩:福井県出身。「群蝶図」(1921年(大正10))のように、草木をテーマの作品が展示されています。

それぞれの画家のそれぞれの特徴を見比べながら鑑賞するのも、おもしろいと思います。

 

(2) 展覧会の構成と気になる作品

・第1章 狩野芳崖狩野派の画家たち - 雅邦、立獄、友信

最初は狩野芳崖と、同門の橋本雅邦、同時期に活躍した木村立獄、狩野友信の絵が並びます。個人的には橋本雅邦の「深山猛虎図」(1885-89年(明治18-22))は横に長い画面で左から右に虎が月を眺めるような構図で、空間的な広がりがある絵で好きですが、このエリアでは、やはり「悲母観音」が好きです。

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(この絵が「悲母観音」です)

この絵は狩野芳崖の絶筆(絶筆とは知りませんでした)で、病に倒れた芳崖が最後の金砂子の蒔き付けを橋本雅邦に頼んだということです。この話だけでも両者の関係がよくわかるような気がします。

この絵は、観音菩薩が水差しから垂らす水の先に宙に浮く嬰児。まさに生命誕生の神秘を表しているようですし、水差しで水を垂らす先の嬰児、その嬰児が観音様を見上げているという、今までにないような構図に、神秘性を感じます。

 

岡倉秋水はこの絵の模写を描き、高屋肖哲は、この絵から、さまざまな観音像を描きます。それが、次の章へと続いていきます。

 

・第2章 芳崖四天王 - 芳崖芸術を受け継ぐ者

こちらでは、いよいよ芳崖四天王が躍動します。私は以下の作品が好きでした。

- 岡倉秋水

龍頭観音図、雨神之図、風神之図」(1901年(明治34)頃) 龍頭観音の半身の姿が動きがある絵で良かったです。また、「不動明王」(?年)も、やはり不動明王の構える姿に動きがあり、明王の前で燃え盛る火焔を赤と白の渦巻きで表現しているのが炎の勢いを感じさせ、好きでした。

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(不動明王図です。今回はこの長い絵ハガキを購入)

 

ー 高屋肖哲

「千児観音図 下図」(1925年(大正14))が、観音菩薩を取り囲む稚児のあまたの頭が、現代アートに通じる構図だと思い、面白いです。本画がないのが、とても残念です。

これに対して「月見観音図」(1924(大正13))は、花びらの上に穏やかな観音菩薩がたたずむという絵で、「千児観音図 下図」の奇抜さとは打って変わって穏やかな感じの良い絵でした。

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(「千児観音図 下図」です。稚児の顔をよく見てあげてくださいね。すごい数でしょ)

 

ー 岡不崩

こちらはあまり展示がなかったですが、小さな巻物の「山水画巻」(明治42年(1909))の表現が、印象に残りました。

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(これは「群蝶図」です)

 

ー 本田天城

山水に名品が多い印象で「山水」(1902年(明治35))は近景は輪郭線をはっきりと、遠景の山は輪郭線がなく、ぼかしで表現し、遠近をつけるなど、近代的な技法も取り入れて、表現されていると感じました。

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(これが「山水」です)

 

・第3章 芳崖四天王の同窓生たち - 「朦朧体の四天王」による革新画風

「芳崖四天王」に対して「朦朧体の四天王」は橋本雅邦の弟子達、菱田春草横山大観、下村観山、西郷弧月の4人です。

この名前を見て、ちょっと、思いませんか。今の世ではこちらの方が圧倒的に知名度があり、目にすることが多い画家なのです。横山大観は今年、生誕150年で多くの展覧会が開催され、日本人の大好きな画家のひとりです。春草も観山も国立近代美術館や山種美術館などで今でも作品を鑑賞する機会が多くあります。でも、「朦朧体」って、西洋で「印象派」が元々は揶揄する言葉であったように、輪郭線のないぼんやりした絵ということで、こちらも揶揄する言葉でした。そんな中で春草や大観等の新しい日本画への取り組みが徐々に認められ、今でも日本絵画史に残る作品が多く残されています。

で、ここからは私の勝手な考えですが、芳崖四天王はもともと「狩野派」という日本画の中の確固たる派閥の流れの中にいます。ところが、この狩野派自体が「最後の狩野派」といわれるように、江戸とともにある意味、時代の終焉を迎えた。よって、この人たちは忘れられてしまった。

前回アップした横山華山はどの流派にも属さなかったので忘れられた。こちらは、本流にいながら忘れられた。とても、興味深い関係だと密かに、かつ勝手に思っています。(なにか典拠があっての意見ではありませんので、ご了承ください)

    

(3) 最後に

この前の横山華山と、今回の展覧会を見て思うことが二つあります。

一つ目は「フェノロサ、すごいな」

フェノロサがこの頃の日本絵画に与えた影響はすごいものがあって、また、彼がアメリカに作品を持ち帰っちゃったから逆に日本ではあまり見なくなる画家もいて、フェノロサの影響力たるや、すごい!と興味が湧きました。そういえば、昨年の都立美術館の「ボストン美術館展」で英一蝶の「涅槃図」が展示されていましたが、これもフェノロサが購入とか。いやはや、どこかで、じっくり調査できれば、面白そうです。(いつやるか。今でしょ、とはいかないかな・・・)

もう一つは、今年は忘れられた画家再考の年のような気がします。渡辺省亭が注目を集める中、横山華山しかり、芳崖四天王しかり。(昨年ですが英一蝶もその一人ですね)

一度、忘れられても、やはり魅力あるものは誰かの目に留まり、再評価されるということですね。(若冲なんかもその一人ですね)

あと、もう一人、今注目の絵師がいて、その展覧会については、また後日。

 

本展、まだ会期もありますので、もしご興味があれば、是非。私の推しメンは、やっぱり「悲母観音」で。

 

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(私も思い出して)

 

・・・忘れることはありません。(っていうか、むしろ僕のこと忘れているでしょ)

 

ではでは。

 

追伸:悲報です。アークヒルズにあった「Aux Bacchanales(オーバカナル)」が閉店していました。とてもショック。ここのクロワッサンを朝食に買うの、楽しみだったのに。カスタードクリーム一杯のパンを食べながらお茶するの楽しみだったのに。これからは銀座に寄ります。

私の大好きだったパンを思い出に・・・

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